借金救済制度の実態を解説!国が認めた減額手続きとは?デメリットや費用まで紹介

借金救済制度とは

Web広告などで目にする「借金救済制度」って何だろう?と疑問に思ったことはありませんか。

「借金救済制度」とは、借金の返済に苦しむ人が生活を立て直すための手続きで、一般的には債務整理と呼ばれているものです。

債務整理には、いくつか種類があり、それぞれメリット・デメリットや費用が異なります。

この記事では、借金救済制度についてわかりやすく解説するとともに、気になる費用や、借金救済制度がどんな人に向いているかなどもあわせてご紹介します。

目次

借金救済制度とは何を指すのか?

借金救済制度とは

「借金救済制度」という言葉を見て、「本当に安心できるのか?」と不安に感じる方も多いと思います。

実際には、これまで多くの人が「債務整理」によって借金のお悩みから解放されています。

この章では、借金救済制度の正体や、なぜ国が認めた手続きといわれているのかその理由、そして安心して利用できる根拠を解説します。

借金救済制度=債務整理のこと

「借金救済制度」とは、正式には「債務整理」という名称の手続きです。

債務整理は、弁護士や司法書士を通じて(個人で行う場合もあります)借金の返済方法を見直す制度で、いくつか種類があります。

「借金の救済制度」という広告は、ここ数年で目にする機会が急速に増えました。ですが、債務整理はずっと以前からある手続きで、もちろんあやしい手続きや特別な裏ワザなどではありません。

なぜ「国が認めた手続き」と呼ばれるのか

広告では、「国が認めた借金救済制度」という言葉がよく使われていますが、それは、次のような理由からと考えられます。

借金問題に苦しむ国民の生活再建を目的とした手続きであるため
・裁判所や弁護士などを通じて行われる手続きであるため
・法律に基づいた手続きが含まれているため

「国が認めた」と聞くと、とたんに「国が許可した借金がなくなる手続き」と考えてしまいますが、それは誇張された宣伝文句です。

実際、債務整理ですべての方の借金がなくなるわけではありませんし、手続きにはメリットと同時にデメリットもあります。

また、状況によっては本当に債務整理が有効なのか、デメリットも含めどの方針を選択すべきかなど、ご自身で安易に判断せず、信頼できる専門家に相談して慎重に検討すべき手続きといえるでしょう。

借金救済制度は本当にあやしくないのか

「国が認めた借金救済制度」は、やや誇張された宣伝文句であるとお伝えしましたが、借金救済制度(債務整理)そのものは、決してあやしい手続きなどではありません。

債権者と直接交渉したり、裁判所に申立てを行ったりすることで、借金の減額や免除を認めてもらえる手続きなのです。

インターネット広告などで「借金減額シミュレーション」といった表現を見ると、詐欺を疑う方もいらっしゃるかもしれません。

借金減額シミュレーションは、債務整理をするとどのくらい借金が減らせるかがわかる簡易診断です。

中には、あやしいシミュレーション形式のものもあるようですが、弁護士・司法書士事務所のホームページで案内しているものは、信頼がおける簡易診断です。

借金救済制度(債務整理)の種類と特徴

借金救済制度の種類

債務整理には複数の方法があり、借金の額や収入、生活状況によって選ぶべき制度が異なります。

代表的な4つは「任意整理」「個人再生」「自己破産」「特定調停」です。それぞれに特徴があり、減額幅や手続きの負担、デメリットも違います。

任意整理|利息を減らして返済を続ける方法

・裁判所を通さず、弁護士や司法書士が債権者と交渉
・主に「将来利息」をカットして、返済総額を減らす
・返済期間を3〜5年に調整できる

→ 毎月の返済額を軽減できるが、元本は基本的に減らない

個人再生|大幅減額でマイホームも守れる制度

・借金を大幅に減額(5分の1から10分の1程度まで減額)
・住宅ローン特則を利用すれば自宅を守れる
・裁判所を通じて認可されるため、公的な効力が強い

安定した収入がある人に向いている制度

自己破産|借金をゼロにできる最後の手段

・裁判所に申立てをして、免責決定を受けることで借金がゼロに
・財産は原則処分されるが、生活必需品などは残せる
・職業制限・資格制限が一時的に発生する場合もある

→ 完全に支払い不能な場合の最終手段

特定調停|裁判所を利用する簡易的な手続き

・簡易裁判所を通して債権者と調停を行う
・任意整理に似ているが、裁判所が仲裁に入る点が異なる
・費用は比較的安価

手続きが簡単で安価なため、専門家に依頼せず自分で手続きしたい人が多く行う手続き。実務上は利用者が減少傾向にある

借金救済制度の流れと手続き方法

借金救済制度の流れ

債務整理は種類ごとに流れが異なりますが、共通した大まかな流れは、「専門家に相談→必要書類を準備→手続き進行→完了」というものです。

この章では、手続きの流れと必要な準備について整理します。

専門家に相談する重要性

ご自分の状況にあった最適な債務整理の方法を選ぶためには、債務整理に慣れた専門家のアドバイスが有効です。

また、弁護士に依頼すると、債権者との交渉はもちろん裁判所へも代理人として対応が可能です。

誤った自己判断で進めると失敗のリスクが高くなるため、まずは専門家へ借金の相談をすることから始めましょう。

必要書類と準備するもの

債務整理の相談・手続きで準備する主なものは次のとおりです。基本的には、相談する専門家の指示に従って準備をするとよいでしょう。

・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・借入先の契約書や請求書、カード類
・収入証明(源泉徴収票、給与明細)
・支出の記録(家計簿、通帳)
・財産に関する資料(不動産登記簿、保険証券など)

手続きの一般的な流れとかかる期間の目安

債務整理手続きの簡単な流れは、次表のとおりです。

スクロールできます
債務整理流れかかる期間
任意整理①債権者と交渉
②和解契約書を交わす
③分割返済開始
3〜6か月程度
(比較的短期間で和解成立しやすい)
個人再生①裁判所へ申立
②再生計画案提出
③計画の沿って返済開始
6か月~1年程度
(裁判所を介するため少なくとも半年以上かかる)
自己破産①裁判所へ申立
②同時廃止or管財事件の手続き
③面性許可決定
④借金返済義務がなくなる
5か月~1年程度
(内容によっては1年以上かかることもある)
特定調停①簡易裁判所へ申立
②調停委員を介して和解
③分割返済開始
3〜4か月程度
(およそ月1回のペースで期日が開催される)

借金救済制度のメリット

債務整理をすることで、返済負担の軽減だけでなく督促からも解放され、生活再建の見通しが立つなどのメリットがあります。

返済負担が軽減される

任意整理の場合、将来利息のカットや長期分割払い(原則3年、場合によっては5年間)の交渉をすることで、毎月の返済が楽になります。

個人再生では5分の1から最大で10分の1まで借金の減額が、自己破産では返済義務の免除が可能になります。

特定調停では、債権者が交渉に応じてくれた場合、将来支払う予定の利息を減額してもらえます。

取り立て・督促が止まる(専門家に依頼した場合)

弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、債権者に対して受任通知が送付され、取り立てが止まります(ただし、支払督促や民事訴訟等の裁判上の請求は止まりません)。

受任通知とは?
受任通知とは、弁護士が依頼を受けて代理人に就いたことを債権者に知らせるための通知です。通知後は、本人に代わって弁護士が窓口となって対応します

特に、債権者からの督促にお悩みの方は、専門家に早めに相談されるとよいでしょう。

生活再建の見通しが立つ

受任通知の送付によって、督促が止まると同時に返済もストップします。返済額や返済期間が明確になるので、将来の生活設計が立てやすくなるでしょう。

心理的な安心感を得られる

督促のストレスから解放されることで精神的に楽になり、心身ともに安定した生活を取り戻すことができます。

また、手続きについての疑問や不安もその都度専門家に相談できるため、どうしたらいいのだろうと一人で抱え込むことも不要です。

借金救済制度のデメリット

債務整理には多くのメリットがあると同時に、避けられないデメリットもあります。特に、個人の信用情報に事故情報が掲載される(ブラックリスト)という点は、理解しておく必要があります。

この章では、手続きを利用する前に確認すべきデメリットを整理します。

信用情報に記録される(ブラックリスト入り)

どの債務整理を行った場合にも、信用情報機関に事故情報として登録される(いわゆるブラックリストに載る)リスクがあります。

「ブラックリスト入り」とは ?
債務整理や支払い延滞などをしたことが、信用情報機関に事故情報として登録された状態

ただし、債務整理をしなくても、滞納が続くと事故情報が登録されてしまうので、返済ができない状況ではいずれブラックリスト入りする可能性は高いでしょう。

債務整理による事故情報の登録は、永遠ではなく一時的なものです。事故情報が登録されているおおよその期間は、次のとおりです。

任意整理・特定調停5年程度
個人再生・自己破産5〜7年程度

クレジットカード・ローンの利用が制限される

信用情報機関に事故情報が登録されると、新たなカード作成やローン契約の利用ができなくなる可能性があります。

ただし、クレジットカードが使えなくなっても、デビットカードやプリペイドカード、QRコード決済など、最近では代替手段が数多くあります。

このような決済手段を準備しておけば、日常の支払いで不便を感じることはないでしょう。

保証人・連帯保証人へ影響が及ぶ可能性がある

保証人・連帯保証人がついている債務がある場合、本人の代わりに請求を受ける可能性があります。

対策としては、任意整理手続きを選択して、その債務を整理対象から外す方法があります。

ただし、借金額が多く任意整理がむつかしい場合などは、他の選択肢を検討せざるを得ないこともあるでしょう。

周囲に知られる可能性はある?

債務整理手続きを行っても、勤務先や家族に通知が行くことはありません。そのため、自ら話さない限り、債務整理をした事実が周囲に知られる可能性は低いといえるでしょう。

ただし、個人再生・自己破産の手続きでは、同居家族の給与明細など資料の提出が必要なことや、家計の見直しといった観点でも家族の協力が必要になることがあります。

そのため、同居の家族についてはバレてしまうというより、正直に説明した方がよいとも考えられます。

また個人再生・自己破産の手続きでは、官報に氏名と住所が掲載されます。官報とは国が発行する機関紙で、誰もが閲覧できます。

しかし官報を見るのは、業務上必要な場合など限られた人であり、一般人が見る機会はほぼないといってもよいでしょう。

借金救済制度の費用相場

債務整理を考えるときに気になるのが「費用」です。手続きの種類や依頼する専門家によって金額は変わりますが、相場を知っておくことで安心して相談できるでしょう。

債務整理の費用相場

債務整理の費用相場は、次表のとおりです。

任意整理5〜15万円程度 (債権者1社につき。減額報酬を含む)
個人再生50〜90万円程度
自己破産30〜130万円程度
特定調停1,000円程度

内訳は、弁護士費用+裁判所に支払う費用+郵送代などの実費です。

金額に幅がある理由は、個人再生や自己破産では、手続きの内容によって費用が変わるためです。

任意整理は裁判所を介さないため弁護士費用のみ、特定調停はご自身で行うことが基本となるため裁判所費用のみとなります。

費用を抑える方法・分割払いは可能か

身近に費用を援助してくれる人がいるような状況でもない限り、「高額な費用を用意できない」と、債務整理を躊躇する方もいるでのはないでしょうか。

その場合は、次の方法を検討してみましょう。

・分割払いが可能な事務所を選ぶ
・債権者への返済がストップしている間に用意する
・法テラスの民事法律扶助制度を利用する

それぞれについて解説します。

分割払いが可能な事務所を選ぶ

債務整理を扱っている専門家も、依頼者が費用を一括で払うだけの余裕がないことは理解しています。そのため、多くの事務所で分割払いに対応しています。

分割払いの相談に応じている事務所に依頼すれば、まとまった金額を支払うのが難しくても、無理のない資金計画で手続きを始めることができます。

相談する専門家を探す際、事務所の料金体系や支払い方法も確認しましょう。相談しやすい環境が整っているかどうかは、重要です。

債権者への返済がストップしている間に用意する

専門家に依頼すると、債権者からの督促や返済が一時的にストップします。その期間に返済へ充てていた資金を積み立てれば、手続き費用を準備することができます。

支払いが止まっている期間を有効に使うことで、費用を分割で負担しやすくなるのです。

法テラスの民事法律扶助制度を利用する

◆法テラス(日本司法支援センター)とは ?
国が設立した法的トラブルを解決するための案内所。 「民事法律扶助業務」を行っており、経済的に余裕のない人などが法的トラブルにあったとき、無料の法律相談や弁護士・司法書士の費用等の立替えもしている

法テラスでは、債務整理費用の立替制度を利用できる場合があります。立替えてもらった費用は、毎月分割で法テラスに支払います。

借金救済制度はどんな人に向いている?

債務整理はどなたでも利用できますが、借金総額や収入、守りたい財産の有無などによって選択肢が変わります。

この章では、それぞれの制度に向いている人の特徴を解説します。

任意整理に向いているケース

・借金総額が比較的少ない(目安は300万円以下)
・安定収入があり、返済を継続できる
・家や車を手放したくない
・3回以上返済している
・保証人に迷惑をかけたくない
・手続きに時間やお金をかけたくない
・周囲に内緒で手続きしたい

任意整理は裁判所を通さず手続きできるため、時間やお金をかけたくない人の多くが利用しています。借金総額が比較的少なく、安定した収入があり返済を続けられる方に向いている手続きです。

自宅や車のような財産を失うこともなく、保証人にも迷惑をかけずに済む点が大きなメリットです。

また、弁護士や司法書士を通じて交渉するため、督促や取り立ても止まり、周囲に知られにくい点も安心材料です。

ただし任意整理をするには、借り入れてから最低でも3回は返済している必要があります。一度も返済していないと、「返済の見込みがないのに借り入れした」と心象が悪く、交渉に応じてくれない可能性があるためです。

個人再生に向いているケース

・借金が500万〜5000万円程度
・安定した収入がある
・ローン返済中の自宅を守りたい
・過半数の債権者の反対がない
・資格が必要な仕事をしている

個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額できる制度で、マイホームを残したい人や安定した収入がある人には個人再生が適しています。

住宅ローン返済中の自宅を手放したくない場合は、住宅資金特別条項を利用すれば住宅ローンを返済しながら手続きを行えます。

任意整理では返済が難しいが、自己破産は避けたいと考える方におすすめできる制度です。

自己破産が適しているケース

・減額しても完済できる見込みがない
・財産がほとんどない
・生活保護を受給している

自己破産は、借金を返済できる見込みがなく、他の制度を利用しても完済が不可能な場合に選択される最後の手段です。

そのため、自分では返済できないと思っても、客観的に見て返済可能な状況であると自己破産できない可能性があります。財産がほとんどなく、生活保護を受給している方や、収入が不安定で今後も返済できる見込みがない方に適しています。

デメリットとして、一定の財産を手放す必要はありますが、督促や返済に追われ続ける生活を終わらせ、再スタートを切るための有効な制度といえるでしょう。

借金救済制度に関するよくある誤解

債務整理にはまだまだ誤解が多く、「すべての財産を失うのでは?」「家族や職場、ご近所などにバレてしまうのでは?」といった不安をよく耳にします。

実際には誤解であるケースも多いため、この章ではよくある誤解と正しい理解を整理します。

「財産をすべて失うのでは?」という不安

任意整理や個人再生の場合、債務者の財産への影響はありません。財産を残して手続きができます。個人再生では、手続きの種類によって住宅ローン返済中のマイホームを残せる場合もあります。

また、自己破産であっても、生活に必要な家財や99万円以下の現金などは手元に残すことができます。

つまり、最低限の生活をするための基盤は守られるのです。「すべて失う」というのは誤解であり、生活を再建するための制度であるという点を理解しておきましょう。

「家族や職場に必ずバレるのか?」

家族や職場へ通知されることは、基本的にありません。官報も一般の人が目にすることは少ないため、官報掲載によってバレることはほぼないと考えてよいでしょう。

また、任意整理の場合、相談時に専門家に希望を伝えて配慮してもらえば、家族に知られる可能性はかなり低くなります。

一方、個人再生や自己破産については、デメリットの章でも述べた通り、家族の協力が必要になる場面があります。今後の生活を一緒に立て直すためにも、家族には正直に事情を伝えることをおすすめします

「一生ローンが組めなくなるのか?」

債務整理をすると一定期間、信用情報機関に事故情報が残り(ブラックリスト)、新規のローンやクレジットカードの利用が制限されます。

しかし、この記録は、債務整理後5〜10年程度で抹消され、記録が消えれば再びローンやカードを利用できる可能性があります。「一生ローンやカードが利用できない」というのは誤解です。

自己破産をすると賃貸物件から追い出されるのでは?

賃貸物件に住んでいる方の中には、自己破産したら賃貸住宅に住めなくなるのでは?と心配される方がいますが、実際にはそのようなことはありません。

破産を理由に強制退去を求められることはなく、現在の住まいに住み続けることが可能です。

ただし、家賃を滞納してしまうと退去請求される可能性はあります。そのため、決められた期日に確実に家賃の支払いを行うことが重要です。

まとめ:「借金救済制度=債務整理」安心して専門家に相談しましょう

「借金救済制度」とは、借金の減額や免除を行う「債務整理」という手続きのことです。債務整理の手続きでは、裁判所を通したり専門家に依頼したりするため、「国が認めた」という説明がされているようです。

もちろん、債務整理はあやしい手法などではなく、借金に悩む人を救う正当で大変有用な手続きです。

「借金の悩みを一人で抱えている」「督促が怖くてストレスを感じている」と不安をお持ちの方は、ぜひ一度弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。借金のお悩みを解決するための道筋が、きっと見えてくるでしょう。

  

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